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引っ越し先での馴染み方・5つのステップ(フロリダ・パームビーチ編)

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「引っ越し」と聞くと、ワクワクしますか?

私は、まず一瞬気持ちが沈みます。20歳で単身渡米して以来、計10都市で16回の引っ越しを繰り返してきても、まだ。

漫画なら、真っ黒な背景とおどろおどろしい書体で「うわああああ…」が頭にのしかかってくるような。

行き先がカリブ海の離島や、常夏のフロリダ、南部のハリウッドと呼ばれているアトランタでも、ワクワクの展望に反しての「うわああああ…

「もう何回も引っ越してるから、プロでしょ~」

と周りから言われても、「いやいやいやいや…」

返せるのは曖昧なヘラヘラ笑い。

押し寄せてくる自問の波の中で、もがいてる最中の私。

引っ越しを経験した人なら、この気持ちに思い当たることがあるのではないでしょうか。

  • 今の住居が持ち家なら、売る? 貸す? 
  • 誰にどうやって? 
  • 水道、ガス、電気、インターネットをこっちで解約して向こうで契約して。
  • 新たな都市の治安は? 住居はどこに
  • 家族一員の転校や転職は? または単身赴任? 
  • 家具や身の回りのものをどうするか、どこの業者に頼むのか

ちょっと考え始めただけでも、山積みになっていく「やることリスト」

でも、それ以上に複雑なのは、気持ちの整理。

住み慣れてきた環境、家族、友人たちとお別れして、新天地での再出発に強いられる勇気努力。自分の進学や転職が理由での引っ越しならまだしも、家族としてついていくとしたら、なおさらです。

国内外どこに移るにせよ、どうやって自分の新しい居場所を見つけていくのか。

この記事では、いったん沈んだ気持ちをスパッと切り替えて、新天地で馴染んでいくときに役立つ5つのステップを綴っていきます。

馴染んできたら、こっちのもの。新しいワクワクへ、どんどん進んでいけますように!

フロリダ南部パームビーチと、沿岸内水路を挟んだ西側のウェスト・パームビーチ

馴染む」とは

オンライン辞書、Weblioで “馴染む”を引くと出てくる意味を見てみましょう。

  1. 人に慣れて親しくなる。物事や人に慣れて親しみをもつ。例)都会の生活に馴染む。土地の言葉に馴染む。
  2. 味わいや調子などが一つに溶けあう。ほどよく調和する。例)家風に馴染む。足に馴染んだ靴。
https://www.weblio.jp/content/馴染む (参照 2022年11月30日)

人と交流し、「経験を重ね」「違うやり方や見方を学び」「自分を新しい環境に慣れさせ」「なごんでゆく」先にあるのが「馴染み」

留依

馴染むには、自分が行動を起こす必要があります

前回は、新しい場所で暮らしを始めるときの心構えをお話ししました。(その記事はコチラ

ここではもう少し掘り下げていきます。

馴染んでいくための5つのステップ

  1. 自分で方向を定め、ハンドルを握る
  2. 検索する
  3. 探索に出る
  4. 人と交流する
  5. 好きと苦手は表と裏。「好き・楽しい」と思う方向に意識を向ける

現在引っ越しの準備をしていたり、引っ越し先で馴染もうとしている方々のお力添えになれば幸いです。

目次

自分で方向を定め、ハンドルを握る

引っ越しに至るまでの状況は様々です。理由が何であれ、引っ越しをすると決めたなら、それは自分が選んだ道人生の「ハンドル」をしっかり握ることから始めましょう。

たとえ、引っ越しが元々は自分の希望することでなかった場合でもです。「引っ越ししないという選択肢」もあったのですよね。

引っ越しを決めた・同意した時点で、それはあなた自身が定めた方向になったのです。「憂鬱だな、乗り気がしないな」と引きずる気持ちがまだあれば、断ち切るときは、今。

留依

「自分の人生は、自分が運転していく」と自覚すると、計画と行動を始めやすくなります。

進む方向を自分で決める

島男子(アイランドボーイ)と私が “Home”  と呼び、いつか帰る場所としているのは、4年半住んでいた、南フロリダ東海岸にあるウエスト・パームビーチ (West Palm Beach) です。大都市マイアミから北上して125kmほどの、のんびりした街。

マイアミの人から「退屈」と言われることもあるウェスト・パームビーチ 
のんびりが好きな街の住人が苦手な場所は「マイアミ」

街の東にある沿岸内水路では、カヤックやジェットスキーが行き交い、クルーザーやが係留しています。小型漁船もこの沿岸内水路から海へ出ていきます。その向こう岸には大西洋沿いに豪邸が立ち並ぶ、有名なパームビーチがあります。と言っても、引っ越す前は私は全くこの隣街のことを知りませんでしたが。

ウエスト・パームビーチへの引っ越しは、島男子の Quality of Life 「生活の質」の向上が理由でした。

当時、二人の勤務先は別々の都市で、島男子は自宅から片道 92キロメートルをかけてパームビーチの北まで通勤していました。しかし南フロリダ都市間の交通渋滞は想像以上で、島男子の通勤は、高速道路での事故や工事で片道二時間にわたることも。

さらに彼はフルタイムでオンライン大学生もやっていて、長距離通勤と職務、深夜過ぎても続く勉強をするのみの毎日でした。太古の昔に中退した大学を、何十年を隔て何としてでも卒業するために。

そんな状況でも決して文句を言わない島男子。自分でハンドルを握って、目的を定め、行きたい道を進んでいるから。

島男子

「僕はね、ミレニアル達と最新の教育を受けてるんだ。ふふふん~」
「カレッジボーイと一緒にいられるなんて、君はラッキーだねえ。職場の人たちは知ってるの?」

真顔で冗談の島男子は、チャレンジ精神のかたまりです。

大人の大学生は図書館がお好き

しかし長距離通勤を続けることにメリットはない。「じゃあ、引っ越して私が再就職しよう」

ハンドルは自分で握る

私の仕事はホテルのコンシェルジュでした。「街の鍵を握る者」(Keeper of the Keys) とも呼ばれ、ベテランは長年努力して街のあらゆる情報を学び、世界中に広がる「友情」で繋がった人脈を駆使して、不可能を可能にするマジシャン。

それゆえ、他の街へ引っ越してきて、いきなり同じレベルで威力を発揮することは難しい。ほんの一年前にフォート・ローダーデールで再出発してたばかりなのに。その前にキュラソー島から帰ってきて、マイアミでリモート再就職してて、もう50歳過ぎてるのに「再々再々出発」くらい? うきゃ~!

でも、「目標=楽しく人生を歩く」を実現させるには、またここから自分で道を作っていかなければ。今まで何回も立ってきた分岐点です。

自分が決めたことだから頑張って動く。覚悟を決めると気持ちが引き締まり、引っ越しと職探しの準備にエンジンがかかります。

目的を見据えたので動け、動いたから新たな目標が見えてくる。

留依

原動力はすでにあなたの中にあり、ハンドルを握るのもアクセルを踏むのもあなた

新天地で待っているのは新しい冒険🎵

検索する

新しい街の見どころや歴史を検索すると、地域の大まかな様子が見えてきます。

見どころを調べるとき、役立つ検索の例をあげてみます。

ビジターセンターの検索

アメリカの都市にはビジターセンターがあり、スタッフは親身に街のことを教えてくれ、地図やツアーのパンフレットも常備されています。簡単なお土産も買えるので、まずここからチェックがお勧めです。

街の名前+“Welcome Center” や “Visitor Information Center” で検索すると出てきます。

街の資料館や歴史博物館の検索

街や地域がどのように発展してきたのか、その土地特有なものは何か、どんな人々が住んできたのかなどが学べます。

“History Museum”, “History Center”, “Historical Society” などで検索してみましょう。

ウェスト・パームビーチにある地域の歴史博物館
(もと裁判所)

見どころの検索

  • パームビーチで無料で楽しめること “Free Things To Do In The Palm Beaches”
  • ワシントンD.C.ですべきこと10選  “Top 10 Attractions in Washington, DC”
  • シアトルでのガイドなし徒歩ツアー “Self-guided Walking Tour of Seattle”

などで調べると、無料か、もしくは殆ど無料で散策やイベントを楽しめる機会がたくさん出てきます。場所によっては、ローカル割引や、毎月一定の日に入館費が無料になることがあるので、要チェック。

お店やレストランの検索

数多いお店やレストランの中で、その街のベストをカテゴリー別で調べていきます。

  • 地元の住人が経営しているお店 (Locally OwnedShops)
  • 地元特産のお店 (Local Specialty Shops)
  • お食事が美味しい (Best Food)
  • 高級店 (Most Upscale)
  • 雰囲気や景色のいいお店 (Best Ambience/Best View)
  • 長年地元で愛されてきたお店 (Local Favorite)

などで調べていくと、何度も出てくる名前に気づきます。それぞれのサイトで詳細、メニューや雰囲気を調べ、地図と参照して探索コースに組み込みます。

レストランの検索にあたり、まず地元の新聞や雑誌のレストラン・お料理担当のジャーナリストが書いた記事からリサーチを深めていくことをお勧めします。

留依

都市ごとのメジャーな新聞や雑誌を検索したり

Palm Beach Post
Washington Post
Washingtonian Magazine
New York Times
The Atlanta Journal-Constitution

全世界を対象にしているトラベルサイトも活用してね。

Condé Nast Traveler
Forbes

これらのフード専門コラムでは、レストランの詳細、シェフの経歴とスペシャリティ、新着レストランやまだまだ頑張っている老舗のお店など、お忍びでの経験から書かれた評論が、様々な角度から書かれています。

有名な評論家は正体を知られないように、偽名はもちろんのこと、変装までして真の評価を心がけているとか。

グーグルや食べログなど読者レビューに載っている一般の感想は、そのあと参考にしてもいいかもしれません。

ウエスト・パームビーチのRH(レストレーションハードウェア)
家具屋さんにあるおしゃれなレストラン

探索に出る

自分の足で街を探索することで、土地勘が養えます。

探索のルートを作る

リサーチで集めた見どころリストを整理して、足で回れるルートを目的地ごとに作りましょう。場所によっては、車や公共交通機関も使って。

ウエスト・パームビーチで、私たちはこじんまりとしたダウンタウンに住むことにしました。スーパーマーケット、レストラン、病院や劇場まで歩いて行ける利便さを重要視したからです。

引っ越しの荷物が片付き次第、私は住居の周りを片道30分から一時間の範囲で隈なく歩き始めました。単なるお散歩ではなく、この街の様子を学ぶ「探索」です。リストアップしていた見どころもいくつか組み入れて行動範囲を広げました。

アンテナ UP

留依

探索のポイント

 行き交う人々の雰囲気や街の音に耳を傾ける
 どこに何があるのかを観察
 写真や動画を撮る
 様子をメモする


帰宅してからもう一度Googleマップを併用して復習するとき役立ちます。

遠足気分の初日、私はTシャツとジーパン、履き慣れたハイキングシューズ、たすき掛けバッグにペットボトルで「わーい、冒険だ~」と元気いっぱい歩き出しました。「あちこち回るんだから、楽な格好が一番!」

パームビーチでお仕事を探す予定だったので、最初の目的地はお隣の街。沿岸内水路をまたぐ大きな橋を渡っての向こう岸にあります。

足を踏み入れた初めてのパームビーチはまるでテーマパーク。美しいスペイン風建築の街並みはブーゲンビリアや胡蝶蘭で彩られ、道にはゴミひとつない別世界。

おとぎの国・バームビーチ

最初に入ったお店は、フロアいっぱいに広がる、バービーちゃんピンクとパルテルカラーに溢れた眩しいド派手なドレスたち。

「おとなが着る色じゃないな~」

よく見ると、柄のモチーフはパームツリー、トロピカルフラワー、ヨット

次のお店には、きんきらごってり系アクセサリー、キラキラサンダルにバッグ。すぐ店員さんが近づいてきて、何かお探しですかと聞かれました。

「あの… シルバーの小さなペンダントとかはないですか?」ついでに娘へのお土産にしようと尋ねると、

「すみません、ここではゴールドが人気なんですよ」

(後から、『ここ』が、『このお店』ではなく、『この街』の意味だと知る)

道には、よく知らないけど高そうな車が行き交い(ベントレーとかポルシェとか?)レストランから出てくる家族連れが、ママと娘はさっき見たようなバービーちゃんピンクのサンドレス、パパと息子もパステルと白でコーディネート。

「なにこれ、雑誌の撮影? セレブ?」

ロールスロイスかな?
一年中咲いている蘭もバービーちゃんピンク!

その時お店のドアにヨレヨレTシャツ・ノーメークの自分の姿が映る。

昔の映画「プリティウーマン」で、カリフォルニアのロデオドライブに初めて足を踏み入れてた、変身前の主人公、覚えてますか? 彼女よりもずっと悲惨なギャップだったかも。

「ちょっと待って。わたし、なんか恥ずかしい感じかも」

もと山ガール、かつブランド物やお買い物にうとい私は、パームビーチの文化を全く知らなかったことを一瞬で自覚しました。

ちなみに私が歩いていたところは、✨「東海岸のロデオドライブ」✨ と呼ばれる、有名なWorth Avenue

メインの通りには高級ブティックやお洒落なレストランが立ち並び、 そこから “VIA” (ヴィア)と呼ばれる何本もの小道に入ると、どこかヨーロッパの街に迷い込んだかのような、彫刻や噴水まであるロマンティックな中庭にたどり着きます。

小道がくねっているのは、次の角に何があるかワクワクさせるため

「新しい街で思いっきり浮く」を、初日に肌で学んでしまった…

キラキラ容姿で歩く街の方々には、私は全く眼中に入っていなかったと確信しているので、開き直りと回復は早かったです。

留依

次の遠足からは、街に溶け込めるようにサンドレスと可愛いサンダルにしました。

または、ブランドで固めているなら、
「ジョギング中にちょっとお買い物(のふり)」もあり。

その街ごとに合った服装をすると、のちの交流がしやすくなります。

フロリダならオフィスでもみんなが着ているリリー💖

安全第一で探索しよう

  • 服装の気配りは地域ごとに対応する 例)パームビーチの格好を離島ネービスではしない
  • アンテナを伸ばしての探索なので、イヤフォーンをしない
  • 五感を研ぎ澄ませ、さらに第六感「自分の心の声」も聞き逃さない
  • 「ちょっとモヤモヤするな」と感じたら、方向を変える
  • 後から車で回ったり、もう少し地域のことを学んでから複数の人数で訪れるという選択もある

特に海外では、道を一本渡っただけで、街の雰囲気や治安が変わることがあります。

新しい地域での探索は、身の安全に十分気をつけてくださいね。

人と交流する

探索は人との出会いを可能にします。勇気をだして交流すると、次の行動も引き出され、思いがけない展開につながることも!

コミュパワー全開!(頑張ろう)

「引っ越し先で馴染む」ことが目的の大人の遠足では、頑張って私のコンシェルジュ・モードをONにします。本当は一人静かに道端の花やトカゲを観察している方が好きなので、これは私にとってエネルギーの消費量大なのですが。

ホレホレ、爬虫類の観察は楽しいのう!
向こう岸がウェスト・パームビーチ

お店やレストランに足を踏み入れた時、最初にこちらから笑顔で挨拶をしてみてください。そして、引っ越してきたばかりで、街の様子を学ぶために訪ねてきたと話します。

社会見学なので、訪れる場所で毎回買い物や食事をするわけではありません。他のお客様の対応で忙しそうなら、店内をさらっと見て、もっと詳しく知りたいことがあれば出直してくるとか。

アメリカでは、店員さんが笑顔で丁寧に応対してくれることが多いです。そこのお店が検索に出てきたとか、外装の雰囲気が素敵だったから興味をもったなどと加えると、逆に私がどこから来たのか、引っ越しの理由などを聞かれたりして会話が続口ことが多いです。

好意を表したいのなら、質問をしてね。相手に興味を持っていることが伝わるから

学生時代、アメリカ人の先生から教わった言葉は本当です。アメリカでは、無言でいるとそれ以上会話を続ける意図がないと見なされると。

自己紹介のような会話のキャッチボールに数分使って距離を縮めてみましょう。相手の時間を懸念して、短くても真心のこもった会話を心がけて。

役立つフレーズ

留依

This is my first time visit.(初めて来たんです)

It’s really beautiful here. (すごく美しいところですね)

I’m so excited to be here. (ここにこられてすごくワクワクしてて)

I’m new here, but I really want to learn. (ここはあまりよく知らないのですが、本当に学びたいと思って)

普段から、日常の物事の美しさや楽しさに目を向ける習慣をつけていると、こんな時に気持ちを言葉にしやすくなります。

ちょっとユーモアを交えたいときは

留依

I’m taking myself on a field trip. (遠足なんです)

I’m fresh off the boat.(移住してきたばかりで)

ネービス島へは本当に船でしか来れないので、実際に “fresh off the boat” のフレーズをよく使ってます。最後に

“literally” (いや、実際ホントだから)と笑って付け加えたり。

留依

注)これは「何も知らない移民」のイメージに掛け合わせた自虐ジョークです。他人を示して使うと、悪口に聞こえるので気をつけてネ。

こんなやりとりがお互いの雰囲気を和ませます。もう会うことがない人との交流かもしれません。でもこれを繰り返していくと、自分の経験値が上がり、度胸がついてきます!

数珠つなぎの親切

あるレストランのマネージャーは、お店の内装やコンセプト、お勧めメニューの品々、混んでいる日とか客層まで説明してくれました。私がもとコンジェルジュだと知ると、地域の高級ホテルのほとんどに知人がいるので紹介するよ、と名刺を持たせてくれたり。

他にも行く先々で、いろんな人が親身に地域の情報やチェックすべきお店を教えてくれたり、お世話好きな人が多い! 心のこもった会話で親しみを育む重要さが身に染みました。

初対面の人からの親切は、更に続きます。

同じ時期、先にご紹介した Worth Avenue の歴史ツアーに参加した時のことです。

一番乗りで集合場所に並び、10ドルの寄付金をクレジットカードで支払おうとしたら、現金しか受け付けていないと言われました。あいにくお金を全く持ってきておらず、最寄りのATMは徒歩で片道15分とのこと。

「走れます!」と道順を調べ始めると、「私たちが払いましょう」と後ろに並んでいたご夫婦がおっしゃったのです。

びっくりして辞退すると、「いいから、いいから」と笑顔。白いサンドレスの奥様と白いリネンのスラックスの旦那様 (しっかりパームビーチの定番)、70代くらいの素敵なカップルが仲良く手を繋いでいる。ありがたくご好意をお受けして、ツアーに参加しました。

南フロリダの建築様式の父、Addison Mizner (アディソン・マイズナー)の家
Worth Avenue でも特に美しく目を引きます

その1週間後、私はツアーを催したワースアベニュー協会の事務所を訪ねました。寄付金の10ドルを持参し、「今後、私みたいに現金を持ってこなかった人がいたら、使ってください」とお願いしました。少額でも、自分のこだわりのために。

事務所の方は私の意図を理解し、少し待つようにと一旦その場を離れました。

しばらくして戻ってきた彼女は、私に地元の彫刻美術館の招待券を2枚と、地域の歴史や見所が満載のガイドブックを下さったのです。なんて優しい…

その後パームビーチのホテルで就職した時、改めて彼女にご挨拶をしました。ワースアベニューでのお買い物(またはインスタ映えするお散歩コース)と歴史ツアーは、私のお勧めベスト5に入っていて、彼女とはお仕事を通して助け合う仲になりました。

パームビーチの歴史者・著者、Rick Rose さんが率いるツアー
着ているのは典型的なパームビーチの男性の装い

物事から馴染む

「積極的に人と話すのがあまり得意じゃない」場合でも、馴染むことはできます。

わかります、私も実はそうなんです。接客がお仕事だったので、いろんな人と交流するテクニックを学ぶ必要があっただけなんですよ。

留依

復習です。

「馴染む」とは

1 人に慣れて親しくなる。物事や人に慣れて親しみをもつ。
 例:都会の生活に馴染む。土地の言葉に馴染む

でしたよね。

だったら「馴染む」は、物事から始められます。

例えば、花や観葉植物が好きな人は、普段から近所で咲いている花々に目がいくと思います。「珍しい花だな」とか、「綺麗に咲かせてるな」とか考えながら通り過ぎるかもしれません。

季節ごとに変わるご近所の風景を楽しみにするだけでも、新しい街への親しみは育まれていきます。

ある日、お花にお水をあげている人を見かけたとしたら。「馴染みの気持ち」が芽生えていたおかげで、「いつも素敵なお花ですね」の一言が自然に出てくるかもしれませんよね。

そこが接点となって、短くても親しみを持って挨拶できる人がこの街に一人できたことになります。「お花好き」という共通点で、簡単な挨拶が日常になり、お互いが楽しめる会話に育って行く可能性もあります。

南国の花、Passion Flower (トケイソウ) 
宇宙から来たみたい

もう一つ例をあげましょう。気軽に人と交流できる場所の一つが、どこの地域でも定期的に行われているであろう、屋外マーケットです。

耳に入ってくるお店の人とお客さんたちとのやりとりから、地域の雰囲気を知ることができるし、何度か通えばその土地の特有なもの、人気のあるお店などもわかってきます。

興味が湧いて話しかけてみたら、お店の人も積極的に教えてくれるでしょうし、地元ならではの情報も聞けるかも。それより先に、話好きな人から声をかけられるかもしれません。

足を運ぶうちに、このマーケットが「顔馴染み」の人たちがいる「心地よい場所」になっていくのではないでしょうか。

交流することで育っていく「馴染み」。地元でのボランティア活動やイベントも参加してみてください。話すことが苦手でも、「一緒に何かしている」という接点が持てます。

行動を重ね馴染んでいくうちに、自分の居たい場所が見えてきます。

フロリダらしい発想が目を引く
ウェスト・パームビーチのマーケット
エルクのツノがこんな風に利用されているとは!

好きと苦手は表と裏。「好き・楽しい」と思う方向に意識を向ける

探索と交流を続け、地域のことが少しずつわかってくると、「いいな、好きだな」と、「ちょっと苦手かも」が見えてきます。

「好き」を見つける

私の場合、パームビーチのブランド嗜好やセレブ調のライフスタイルは、自分とはかけ離れた世界。

でも、歴史を学んで街への興味も深まって、訪れるたび映画のセットに紛れ込んだ気分になって、足取りが軽やかになってきました。

アクアブルーの海が広がる常夏のフロリダ、眩しい太陽。バービーちゃん風の色合いに人気があることにも納得できました。街中に咲いてる鮮やかな花々、街路樹はパームツリー、住む人たちは口々に「ここに住めてラッキ~」と言ってる。そんな風景と気持ちを反映した楽しい色と柄だったんだ!

パームビーチ発祥・Lilly Pulitzer へのハードルは高かった 
けど4年半かけて飛び越えた!

「苦手」の理由を考える

その反面、ところどころで見えてきた政治的な偏りが気にかかりました。自分の支える政党や思想への気持ちを熱情的、時には過激に表現する人々がアメリカで増えてきた時でした。

いつもの屋外マーケットでのんびり歩いていた時、突然釣り竿と狩猟用ライフルを掲げた人たちが大勢で押しかけてきたことがありました。

彼らは、フロリダの「釣り道具や狩猟用の器具を持っていれば、公共の場でライフルを隠さずに持ち歩いても良い」という不可思議な法律を利用したのです。明らかに、マーケットで釣りや猟をしにきたのではない。でも、「言論と表現の自由」が保証されているので、自分たちが銃器を持つ権利の主張のための行動でした。

このトピックは、アメリカ中でとても複雑な感情をかき立てます。その人たちの存在に気づいた人々の様子や周りの雰囲気が変わってきたと感じたので、私はその場を去りました。

出会った人の考えや行動、置かれている状況が自分と合わない時、いったん時間をおいて「何が嫌なのか」を考える習慣をつけることをお勧めします。

留依

自分の「苦手」を理解すると
それをどこまで克服したいか、妥協できるかが測れます。

自分がどうやって関わっていきたいのかを明確にすると
自分が納得する行動が取れます

その過程も、自分に対しての「学び」です。

すぐさま自分の意見を主張したり深掘りしたい人もいるでしょう。それはそれでいいのです。率直な意見の交換が好きな人たちが、周りに集まってくると思います。

We Agree To Disagree

私の以前の職場での話ですが、政治的な意見が真逆な同僚がいました。お互い自分の支持する政党への気持ちを熱く語り、相手の政党や属する政治家をジョークのネタにする毎日です。

でも、この二人は仲良しなのです。自分の政党への悪口に「まあ、そりゃそうだけど」と納得したり、同等の辛辣なジョークで言い返したり、まるでお笑い芸人さんたちのやりとりでした。気分を害してお互いを無視し、険悪な環境になる可能性だってあったのに。

“We agree to disagree” (同意しないことを同意する)

彼らはこれを達成してるんだ、と私はサイドラインで感心していました。

お互いの違いを受け入れ、意見を尊重し、自分の「嫌い」(相手の政党)から「好き」(同僚への友情と、楽しい時間)に気持ちと行動の方向を変えていました。素晴らしい!

人との交流の中で、全てのことに同意することはないでしょう。でも、お互いが好きな物事で繋がっていたなら、双方が楽しめることに時間を共有すれば良いのです。

「好き」と「楽しい」を意識しよう

「苦手・嫌い」への意識は、学びの機会です。そして自分の「好き」に意識を持っていくと、同じような考えを持った人や、そんな人たちが楽しめる物事に繋がっていきます。

新しい街での再出発は、「なりたい自分」を目指して成長し、馴染んで心地よい居場所を創り上げていくチャンスです。

沿岸内水路の向こうがパームビーチ
元石油王・鉄道王・フロリダ観光開発の父 
ヘンリー・フラグラーの家が見える

まとめ

引っ越し先で馴染んでいくのに役立つ、5つのステップをお勧めしました。

1 自分で方向を定め、ハンドルを握る

「自分の人生は、自分が運転していく」と自覚すると、計画と行動を始めやすくなります。

2検索する

新しい街の見どころや歴史を検索すると、地域の大まかな様子が見えてきます。検索で出てきたことを、エリアごと整理し探索ルートを作りましょう。

3 探索に出る

ご近所や見どころを自分の足で探索することで、土地勘が養えます。

4人と交流する

人と交流することで「馴染み」行動を重ねていくうちに、自分の居たい場所が見えてきます。

5 好きと苦手は表と裏。「好き・楽しい」と思う方向に意識を向ける

引っ越し先での文化も人々も、まず受け入れてみましょう。

新しい学びの機会として感謝の気持ちを抱けば、その土地や人々の独特なところを受け入れ、自分がそれにどう反応しているのかも、客観的に受け止めやすくなります。

それを踏まえて、自分が喜びを感じる方向へ進んでいけば、いずれ自分のペースで、心地よい場所を創り出し、馴染んでゆくことでしょう。

引っ越しは、新しい冒険と自分の成長を可能にするのです。

「馴染み方の5つのステップ」が、少しでもお役に立てば嬉しいです。

あなたが落ち着ける居場所へは、いずれあなたが導いてくれます!

私が「好き」に向かうと、たどり着く風景 
ジュノービーチ・フロリダ

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この記事を書いた人

20歳で渡米、留学〜就職〜結婚を経て, 娘が大学へ旅立つと同時に、私も再出発を決めました。

次の舞台へ飛び込む矢先、もと同僚の島男子と再会します。

まるでジェットコースターに乗ってるようですが、心は年々穏やかになっています。

二度めのカリブ海での島暮らし。しっかり、しなやかに、前進しています。

Crossing the Pacific at age 20, I built my life in the US. After my daughter took off to college, I decided to start over again alone.

Just as I was about to jump off to my next stage, I reconnected with my former colleague, the Island Boy.

It may seem as if I’m on a roller-coaster ride, but the tranquility fills my heart.

Second time around living on the Caribbean Island, I continue my journey with my heart kinder and wide-open.

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